杉浦 剛の記事

感情を文字に、言葉に表情を。

魚釣りの話

 

その、道具について思う事

 

魚は、人間の使う道具など知ったこっちゃない。

10万円の道具を使っても、100円の道具を使っても、同じ魚を釣る事ができる。

 

最初から高価な道具に慣れてしまえば、もう安価な道具には戻れない。使いこなせない。

逆に、安価な道具を使い込んでいれば、高価な道具の恩恵を驚く程に感じられる。

 

俺は最初、300円の釣り竿で魚釣りをしてた。リールも一番安いもの、糸もとにかく安いもので釣りをしていた。

それでも不自由に思った事って特に無い。

ただ、肝心な大物が掛かった時に、糸が切れた事、竿が折れた事、リールが壊れた事がある。

それから少しずつ価格の高い道具を使うようになっていった。それでも今、トータルで1万円もするもので十分で、満足している。

 

何よりも糸が生命線。これが切れたらどうしようもない。

最優先に考えるのは糸。糸さえ切れなければ、竿が折れようがリールが壊れようが、魚を釣り上げられる。

その糸をトラブル無く扱えるリール、魚の抵抗をうまくいなしてくれる竿であればそれで十分。

 

 

初めて乗合船でマダイを釣りに行った時だ。

知らない人の使ってる道具はとんでもなく高価なもの。沖のポイントに向かう途中に自慢話を延々とされた。道具が良くなくちゃ、っていう話。

俺はいつも使ってたトータルで1万円くらいの道具、これじゃちょっと…って笑われた。

 

船での釣りが終わり、船着き場に戻った時、俺は大きなマダイを釣っていた。

あれこれ自慢してた人は何一つ釣れていなかった。

 

 

道具じゃないんだ。

魚を掛けてからの快適さはもちろん違うんだろうけど、仕掛けや誘い、魚はそれを見て判断して、初めて食い付いてくれる。そのチャンスを逃さない為に水中のイメージをする事が大切。今魚が何を考えているか、疑いながらも大好物を前にして、食うか食わないか迷っている。それが糸を通して伝わってくる。そこでどうしても食べなければと思わせる事で、針に掛ける事ができる。

やりとりも使いこなしてきてるものなら特に慌てる事も無く、あっけなかったというのが率直な感想。初めての船釣りは、釣れないわけがないと思った。魚群探知機で泳いでる水深も群れの大きさもわかるのに、食わせられないのは使う道具とは全く関係ない。

大物をほぼ確実に狙える船釣り。

その日の状況にもよるのかもしれない。

でも、いるかいないかわからない釣りをしてきた自分にとって、そこに感動というものは無かった。

大金はたいて確実に釣るか、少しの移動費であわよくば釣るか、人によって考え方は違う。

俺は魚の付く可能性の高いと判断した場で、針に掛かるその時を狙う方が面白い。

 

 

高価な道具は所有欲、コレクション性の方が勝っていて、道具として毎日のようにガンガン使いたい自分にはあまり魅力を感じない。

必要最低限の機能を備えていれば不自由しない。浮いた金銭は移動費に回した方が全然良いと思ってる。

数千円の道具だって、メンテナンスをしていれば10年以上、今も快適に使えている。

いつかは壊れるのかもしれないけど、それまで使い続けていきたい。最新のテクノロジーも、10年経ったらどうなるか。魚を釣る為の道具に釣られてるようでは元も子もない。

 

あの時に自慢された道具も、今じゃ数千円のものにそのテクノロジーは採用されている。

 

 

糸。

またはライン。

 

これを妥協しなければ、必ず釣れる。

あとは予算の範囲内、デザインの好み、それらで所有欲を満たせば良いと、俺は今でも変わらずにそう思ってる。