杉浦 剛の記事

感情を文字に、言葉に表情を。

ウマなのかシカなのか

先々月、車を電柱にぶつけても身体は無傷だった。

先月、財布を落としてもカネは抜かれたが見付かった。

今月、カードを落としてもそこの会社に連絡して使えないようにできた。

さて来月は、何を落とすか。

 

 

こうやってネガティブになっているようけど、昔からこのような奴だ。

 

あれは八戸郵便局にいた頃。

中心街を担当していた。配達件数、部数共に局内で一番多いポジション。あの時はトイレに行く時間がもったいないと思いながらやってた。今の自分にやれと言われたら、泡を吹いてしまうだろう。

ある日の配達中、歩行者用の信号が点滅している。赤の間に携帯端末の画面を次の追跡コードを読み取るだけの状態にしておこうと手をいつもの所にやったら、無い。

え?

 

信号が青になってとりあえず進んだところにバイクを停め、そこで初めて紛失したと理解した。

最後に使ったのはどこだっけ。あそこか。宛先を思い返し、そこから捜索を始めた。ちんたら走らせては降りてポストまでの道を走って、時間ロスの焦りで汗がだらだら垂れる。

さっきの信号が見えてきて、焦りはピークになった。

と、そこで車道にゴミらしき物が見えた。直感的にそれだとわかり、近付いて颯爽と拾い上げて信号の先、さっき理解した地点でまた理解をした。完全に終わっていると。

今思い出すと、スマホみたいだったな。

 

焦りを通り越し昇りつめた俺は淡々と、課長に電話で状況を伝えた

なぜそうなったか?

それは落とした事に気付かなかったから。

じゃあなぜ落としたか?

それはストラップが切れていたから。

じゃあなぜストラップが切れたか?

それは扱いが雑だったから。

じゃあなぜ雑に扱ったか?

それは急いで余裕が無かったから。

じゃあなぜ…

 

うぉぉぉぉい!!

今じゃないだろう。あとどれだけ手紙があるか知ってて言ってる?それともふざけて言ってる?

一回、局に戻った方が代替機を持ち出せるし、このスマートな現物を見せた方が色々と早い。

 

その日は時間内の配達完了ができなかった。辺りは真っ暗になって、最後の一通をポストに入れた時、悔やしかった。戻ったら怒られる程度で済むのかは知らないけど、今日やるべき事はやったと、誰にも見られない所でタバコを一本吸いながら今日を思い返した。

 

いつもなら昼前には配っていた家のお爺さんへの手紙、夕方になってしまった。そしたら隣近所さんと何やら会話してたから、すみません、遅くなりましたが郵便ですよ。って。

おーあれあれ、来た来た!待ってらったんだそれよぉ。今日届ぐって聞いでらったがら、んん?いっつも午前には配達の兄ちゃん来てポストさ入れでぐよなぁ?って隣の婆さまに聞いだら、こっちさもまだ来てねぇって。あれ、おがしいなぁー?っつって。なぁ?んだ。

こりゃ、怒られるよなぁ…と、お待たせしてしまい本当にすみませんでした。って謝ったら、なーに、たまにゃ何かあるべよ。こごらば全部配ってんだべ?んで毎日こったら時間まで配ってんのが!?おらんどぉもうまんま食って、はぁ寝るだげだじゃ!ハッハッ!じゃあ急いでも怪我しないようやってけろー!へばまだ、よろすぐ!

 

こういう時だからこそ、良い事だけを思い出して、タバコを灰皿に入れ、戻るべき所に戻った。

 

手汗がじわる。ほぼ誰も残っていない薄暗い郵便区分棚の奥に、課長の席がある。

でも俺は受け入れている。全てを込めて謝る。それが今できる事。

 

課長はまず、笑って言った。

見てこれ、こんなになったの多分誰も見たことないぞこれ。

そうでしょうねと俺。

これはもう直しよう無いから、明日からは予備のとこにあるやつ使ってくれ。あと、顛末書を書いて提出して、そうしないと俺も帰れねぇんだからな。早く書けこのバカタレが。

 

怒鳴りもせず、説教も無く、拍子抜けしながら顛末書を書き始める。書式が用意されていたから、割とすぐに書き終わった。始末書はわかるけど、顛末書って今更ながら何だろう?とにかく提出した。

時折頷きながら目を通し終え、パタン。よし、一本吸って帰るか!

 

八戸郵便局は屋上が喫煙スペース。

本当に申し訳ございませんと改めて言うと、課長は言った。たいていの奴は壊したら壊れてた事にしようとする。そりゃ怒られるのは誰だって嫌だし、同じ班が良く見られなくなるからな。でもそういうのって結局本人にしかわからない事。それをお前は憎たらしいくらいそのままを俺に伝達した。配達も多いのに、見てみ?お前の班、誰もヘルプ行かなかったろ?お客さんを待たせてしまったのは良くないけど、ちゃんとやってきたお前は俺は個人的に評価する。部長とか支店長はどうか知らんけどな。そう言ってじゃあまた明日と家までチャリを漕いだ。

なんか濃い一日だったなぁ。でも待ってる人かいるなら、できる限り一秒でも早く届けたい。マイペースだけど性分はせっかち。矛盾してるようでしてない。自分の問題に対してはマイペース、他の人の問題に対しては異常なくらいせっかちになりがち。自分の一つ知らなかった部分に気付いたのはそんな昔でもない。時には自分を奮起させてやらないとずるずるとしてしまう。他の人の言う言葉の本質を見抜いてどうでも良ければ聞き流すくらいできるようになれたら、少し呼吸が楽になるような気がしてる。

 

 

郵便ネタは例の1つに過ぎない。まだまだ、間抜け話は思い出せないくらいたくさんある。

 

焼肉屋に行った時。

あれは牛角だったろうか?奢ってもらってご満悦の帰り道、あれ?財布が無いんだけど忘れてきたかも!って電話したら店内座席の方にございましたー。とか。

 

ヒラメに執着してた時。

ヒラメは今日ここじゃない、水中も見えないくせにこの視界にはいないと、釣り場を一時間ほど移動して再開しようとしたらルアーケースが無い。あ、そういやさっきのポイント、テトラポットに置きっぱだったって戻って探したけど無くて仕方なくまた移動したら、ベスポジに先客が入っていて諦め、ただの海沿いドライブになってしまったとか。

 

真冬の車中泊の時。

まじか今夜は氷点下かよ。残り少ないガソリンを使ってエンジン始動、車内と毛布とダウンジャケットを暖め、よし今だと眠りについたけどほんの一、二時間でギブアップ。再度エンジンをつけて眠ってたらガス欠でエンジンが停まった。朝を迎えスタンドがオープン同時に電話でガソリン500円分入れてもらった。本当に助かりましたとキーを回してもエンジンがかからない。今度は、バッテリー上がりをしていた。スタンドの方はもう苦笑いするしかないが、ケーブルを繋いで処置してくれた。

場所は違えど、ガス欠とバッテリー上がり、何度かやらかしている。

 

その他にもおっちょこちょいな事、たくさんしてる。

気が向いたら書きます。