いてもたっても居られなくなる時がある。
衝動に理性が追い付かない現象。
温かい光に包まれたと思えばもう、お月様は目の前で手を差し伸べている。優しく微笑んでいて、身を委ねようと手を伸ばす自分が見える。
自分は誰なんだ?
自分が自分を、ただ冷静に見ている。
どっちが本物の自分かわからないまま、気が付くと息を切らしてうずくまって、胸を押さえている。苦しさと痛みで息を深く吸えない。身体はビリビリと痺れていて立ち上がれない。
見上げると決まって満月だ。
これは作り話じゃない。
あの日の夜もそうだった。ハンドルを両手でしっかり握っていても、左に引っぱられる。
日本海の崖っ淵、何度も何度もそれがやってきて、新潟の市街地まで来て夜明けを待った。
今日は満月だからとか、そんな意識はしていない。
まさかなと見上げた空には必ずまん丸い月がいて、不気味なくらい浮き上がって見えてくる。
もう気のせいでは済まない、そんな気がし始めてる。