杉浦 剛の記事

感情を文字に、言葉に表情を。

生き血の行き先

初夏の心地良いある夕暮れ時、蚊が腕で血を吸っていた。

膨れてきた腹部には俺の血液が溜まっているんだろう。満たされた蚊は弱々しく飛んで行った。どこに行くだろう?赤く少し腫れた腕に痒みを残して。俺はあの蚊の役に立てたんだろうか。

 

わからないまま、同じ場所でまた腕に蚊がやってきた。こないだとは違う個体だろう、きっと。

膨れてくる腹部、そろそろ欲を満たし飛び立つ頃か。

 

おもいっきり潰した。

腕に死んだ蚊と赤い血が見えて、今度は俺が欲を満たした。腕の痒みは彼の生きていた証で、赤い血は俺が生きてる証。

地面に払い落とした死骸を見ながら、まさかここで潰されて死ぬとは思わなかったろうけど、幸せな最後であってくれてたら良いなと、勝手にそう思った。

 

生きる行為は否定しない。何の迷惑にもならず生きていくなんて、できない。

 

できやしない。